2020年6月4日にIPOされた広瀬隆雄さんのZI ズームインフォについてのライブをまとめました。ZM ズームビデオとは一切関係のない会社ですが、2020年のIPO銘柄の中では注目度の高いものだったかと思っております。
※Q&A部分は一部のみ掲載します。
投資にはリスクが伴いますので自己判断・自己責任にてお願いいたします。
IPO売り出し目論見書の記載内容については以下記事です。
ZIズームインフォ IPO幹事企業 主幹事はJPモルガン
JPモルガン・モルガンスタンレー・バークレーズ・クレディスイス・バンクオブアメリカセキュリティーズなど
ZI ズームインフォとはどんな会社?AIを使った顧客データベースをクラウドで提供する。
AIを使った顧客データベースを提供する会社です。
詳しくは以下にまとめています。
ズームインフォのサービス 営業マン向けのデータベースを最新版にして提供。顧客情報、属性の分析も行うクラウドサービスを提供。サブスクリプション型。
営業マンが電話をかけまくるときに顧客(コンタクト先)のデータベースをクラウドを通じて提供する会社。サブスクリプション(定期課金)。AIを駆使して最新の顧客情報を維持している。営業マンが顧客リストを管理、整備する手間を大幅に省くことのできるツール。
営業マン支援ソフトというとCRM セールスフォースがあるが、突き詰めて考えると管理のためのソフト。営業マンのためのソフトであったかは微妙なところ。
セールスフォースが微妙な理由として、顧客情報が古いという問題があった。とりわけアメリカ企業は1年で社員の1/4が転職する。コンタクト先リストはどんどん変わっていく。加えて昇進やM&Aによる社名変更などもある。
顧客情報の整備という無駄に営業マンはすごく時間をかけていた。
ズームインフォは最新情報の取り込みとAIを使った整えなおし、最新版の提供に加え、顧客ごとの成功確率、優先順位(ランク付け)、興味度合いの測定などを行う。
データベースへの収録企業は1,400万社と充実。コンタクト先担当者の名前ベースでの登録は1.2億件。
アメリカ中のセールス担当者がみな同じズームインフォのデータベースを使って営業している。
競争上、ライバルが使っている兵器は、自社でも導入すべきという情報の軍拡競争が起こる。競争から劣後しないためにズームインフォを入れるようセールス部隊が部長に直訴する、というような事が起こる。
営業マンはどのようにズームインフォのサービスを使う?メリットは?
実際にズームインフォを使ってどのように営業がされるか。
個々の営業マンは営業テリトリー(地域)を定義するにあたり、ズームインフォを使って定義することが出来る。ターゲット企業の(大小、業種、エリアなど)を分け、セールスマン同士がかち合わないよう、テリトリーの定義づけもできる。
会社のウェブサイトに潜在顧客が訪問した場合、何を見て、どういう事に興味があるのかを営業サイドに提供する。ライバル企業への興味具合も提供する。自社の別部門のセールスからのコンタクト有無もわかる。見込み客の組織図、意思決定関係も理解可能。
顧客企業―どういう企業がすでにズームインフォを使っているか。多数の企業が使用している。年間100万ドル超の大口顧客も15社。
ソニー、コカ・コーラ、KPMG(スイスの会計・コンサル)、スラック、オクタ、バンクオブアメリカ、UBS、ユナイテッドヘルス、ベストバイ、ターゲット、ウォルマート、フェイスブック、フォレスター、レクサスネクサス、ウーバー、コロンビア大学、ヒルトンホテル、マリオット、スターバックス・・・たくさんの企業。
顧客数1.5万社。うち、年間100万ドル以上を支払う大口顧客が15社。年間10万ドル以上が630社。
ズームインフォの財務諸表…とても良い
- Profitability 収益性が高い
- バランスシートがキレイ
- キャッシュフローも健全
- サブスクリプションモデルなので売り上げが読みやすい
このIPOはピカピカのディールだと思う。
※本社はワシントン州バンクーバー。カナダのバンクーバーではない。
IPO 値決め価格21ドル 4,450万株➡2020年6月4日上場初値40.01ドル➡終値34ドル
公開価格21ドルに対し、2020年6月4日の上場初値は40.01ドルとなりました。6月4日の終値は34ドルでした。
IPOについて
いま、(2020年6月頭)IPOマーケットはほぼ閉まっている。
いつからかというと2019年秋、ウィワークがIPOできなくなり、経営がおかしくなり・・・ということがあった。それ以来大型IPO(とりわけテクノロジー)は全然できない状態に。
さらに、新型肺炎の影響もあり、IPO市場は閉まっていた。
こういうときにBankerが何を考えるか。
IPOで一番難しいのは最初のディールをこじ開けること。最初のディールは一番強い会社をぶつける。成功した場合、2番手、3番手、4番手の後続を続けることが出来る。ズームインフォのIPOはウォールの投資銀行が持つ、手持ちの中で一番筋のいい銘柄をぶつけている。
IPOのサイクルがあるならば、今はクローズしている。(冬の時代)
何とか春を迎えるにあたり、突破口として最初のディール(ズームインフォのIPO)がある。
投資家目線なら、最初のディールが出てくる場合、ほとんどが買い。買い手にとって有利な条件(Buyer’s market)でIPOされがち。それで儲かると投資家がエキサイトして、次も、その次も買いたくなる。期待が上がる。
Banker(IPOを仕掛ける投資銀行)目線としては、雪解けを確認した場合、1発目が買い手にあまりに有利な条件であった、2発目はイシュワー(発行体)に有利な条件設定を行うようにしていく。条件を釣り上げていく。
投資家サイドは次も、その次も、と強欲になるが、ディールのプライシング条件はだんだん投資家に不利になってくるがほとんどの投資家は欲がある故に気付けない。
サイクルの一番最後のIPOはクソなものになりがち。それに投資家が捕まると大損をする。
個人投資家が心掛けること。皆がビクビクしている瞬間は大胆に。皆が欲にまみれているときは用心深く。
Q&A
ZI ズームインフォ IPO初日に買うなら開始直後に成行買い?
難しいのディール。
主幹事JPモルガンは「引けピン」型の証券会社。「寄りピン」型がゴールドマンサックス・モルガンスタンレー。
引けピン➡低い値段で開けて、だんだん高い値段にしていき、IPO初日の大引けが一番高い値段で終わるようにする。顧客注文の買い余力を温存するやり方。IPO初日の大引けまで顧客を傷めることなく、その日を追えることが出来る手法。デメリットは華々しい・エキサイティングなIPOのオープニングにはならない。
例えば思いっきり高い値段(40ドル)くらいで開けることもできるが、買い余力の残っている30ドル(この段階では売りたい機関投資家は少ない)で開けてしまう。というやり方。
寄りピン➡思いっきり高い値段で開け、そのあと高い値段に張り付いたまま大引けを迎えることを目指す。話題性を提供することが最も安全な方法で、すごい高値で上げること、買いのFire Power(火力)をすべて寄付に集中させる。営業力で高い値段を維持することが可能であるという自負がある為成り立つ。
JPモルガンは引けピン型を主としているが、華々しくやるモルガンスタンレーやゴールドマンサックスのようなやり方にチャレンジしたいと思っている。LYFT リフトのIPO初値はJPモルガンが主幹事で、40ドルくらいで寄りピン型だった。
参考:LYFT リフトのIPO後チャート
リフトよりズームインフォの方が良いディール、売り出し金額もズームインフォの方が少ない。リフトはJPモルガンにとって大きすぎるサイズのディールだったが、ズームインフォなら華々しい開け方をしても大引けまで引っ張れるかもしれないとも思う。共同主幹事がモルガンスタンレーのため、ディールの途中からリーダーシップを奪って価格を維持する可能性もある。リフトのIPO時にはモルガンスタンレーもゴールドマンサックスも関係していない。(ウーバーのIPOに参加したため)
※今回のZI ズームインフォは初値40ドル寄りピン型での開けとなった。
ZI ズームインフォ の類似サービスをCRM セールスフォース、LNKD リンクトインも提供しているが、差別化できる強みは何か?
エンタープライズ向けソフトウェアで圧倒的な立ち位置に居たのがオラクル。
マーク・ベニオフ(セールスフォースの創業者)もオラクルの営業マンだった。オラクルは名物経営者を次々に輩出した。C3aiのトーマス・シーベルもそう。
いずれもオラクルを独立し、敵対するようなソフトウェアの会社を始めた。
時代はオラクル時代からセールスフォース時代に移ったが、これからはそのセールスフォースが守りの立場になる。ズームインフォのような若い企業がセールスフォースキラーとして台頭してきている。
オラクルもCRMが出てきたとき、CRM的なサービスはしたかもしれない。セールスフォースもズームインフォを見て類似サービスを出してくると思う。テクノロジーへの投資の際に覚えておいてほしいのはポイントソリューション(一つの商品でまっすぐに切り込んでくるような会社。ZI ズームインフォ・ZM ズームビデオのビデオ会議など)をしてくる企業は侮れない。
ズームインフォとセールスフォースどちらにかけるというならじっちゃまはズームインフォにかける。
ディフェンダーにかけるのではなくアタッカーにかけるべき。ビジネスは常に攻撃する方が面白い。とりわけハイテクはアタッカーに賭けるべき。日本人には分からない感覚かもしれない。スタートアップの企業が老舗に負けているのが日本という国。アメリカのS&P500指数には若い会社ばかり。アマゾン、フェイスブック、アルファベット(Google)・・・若いパワーを軽視しないで。
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