コミックス好評発売中です。
九条の大罪 第35審 あらすじ ネタバレ注意
とのくん(外畠)と笠置衣子(雫の母)が亀岡麗子と向き合っている。
外畠はYoutubeで亀岡を見つけたようだ。
手帳もちの娘を騙してさらし者にしたAVメーカーを許せん、という衣子。
できるだけ多くの慰謝料をもらえるよう取り計らってもらえないかと衣子なのか、外畠なのかが続ける。
亀岡はAV出演の契約にサインをした衣子について指摘をする。親ならば娘を護らないといけない。と。
雫が障害者でもそれを隠してサインをしていたら裁判では不利、契約上の落ち度はメーカーにはないと。
本裁判で争うならメーカーが雫は障害者であることを本当に気付けなかったのかを問うと言っている。
こういった説明を聞いているのかいないのか、慰謝料を気にしていくらくらい取れるかを聞く外畠。
親もひどいと思いつつ、いくら取れると思っているか問いかける亀岡。
それにに対し、3,000万は払ってもらわないと困るという外畠だが、亀岡は良くて500万円だと見積もる。
場面が変わって九条と向き合う亀岡。亀岡曰く九条は大人っぽくなったというか険しい顔立ちになったようだ。
なぜAV業界や風俗産業を目の敵にするのかという九条に対し、弱者を商品化して消費する悪を許さない、という亀岡。
さらに、障害者をはめた今回は絶対に許せないという。
これに対し九条は本人はAVをやりたがっていて、仮にそれが間違いだったとしても決めるのは亀岡や外野ではないという考えを伝える。
雫に修斗が電話をかけてきたようだ。
雫はAV強要出演の問題が炎上しワイドショーで会社が叩かれAV出演が出来なくなったらしい。私は汚い生き物だったが、AVに入って良かったと思えた、その居場所がなくなったことに対し、どうしようと涙している。
修斗は大丈夫だよ、AVで売れたからいい条件で風俗嬢になれる。良い店を紹介する、と伝える。
つづく
九条の大罪 第35審 感想
前回、雫の第2の人生が始まり、そしてあっという間に終わろうとしているのではないかという不安を覚えた回であったが、少なくともAV女優としての輝かしいデビューから1話で引退となってしまった。
大型新人、雫花ぴえん(しずくぴえん)引退。
亀岡の問題提起はマスコミをにぎわし、雫花ぴえんはあっという間に引退に追い込まれてしまった。
マスコミに取り上げられるくらいで人気の女優の引退ともなると、雫の引退=炎上問題が直接の引き金であることは一般のAVファンや雫ファンにとってはよく知られた事実なんだろうか。
引退して拠り所を失った雫に対してすぐさま風俗店を斡旋する修斗だが、彼は最初に風俗に行くことを覚悟していた雫に対して、自己評価を誤っている、と伝えていた。
雫の障害者手帳が本当に雫が障害を持っていて正当に得たものなのか、それともなんらかの言いがかりで衣子や外畠の生活や娯楽の金のために不当に得たものなのかは分からないが、消費の産物①での受け答えやAVの面接での話し方を見ると、きわめて普通のコミュニケーションをしており、雫は心に傷を負っているものの果たして何が具体的な障害をもっているのかはよくわからない。
そうなると、修斗の言った言葉の矛盾であったり辻褄、例えば今回は当初はより高い地位であると州都がみなしていたAV業界から、低い自己評価が選ぶ職業であるとした風俗嬢への推薦をしているなど、口先ばかりの誉め言葉と実際の発言や行動の辻褄がだんだん合わなくなってくるような気もするが、今のところ雫は変わらず修斗を頼っているように思える。そして風俗嬢として第3の人生を歩むようだ。
ただ、あえてもう1点だけ今回気になった点を挙げるならば雫はAVの出演差し止めになったことを修斗に相談をしていないようだ。
これは電話が修斗から来て、修斗は粟生から差し止めを聞いたと言っている。つまり、しずくは現況の報告を修斗にしていないということとも捉えられる。
これが気になる理由として、雫の口から再び私は汚い人間だった、という過去の記憶が呼び戻された言葉が出てきたことがある。雫は修斗により自己肯定感を高められたが、やりがいのある仕事を失い、再び自分は価値のないものであるかと疑い始めている。
汚い人間だったが、AVをやって良かった、といっているが、これはまた汚い人間に戻ろうとしている、という吐露に聞こえる。
だとしたら、修斗がかけるべき言葉は良い条件で風俗嬢になれる、という言葉だったのだろうか。
もう一度、出会った日のように「しずくちゃんは汚くないよ」と肯定をすることが雫に仕事をさせる上でも、彼女の幸せをサポートする上でも、必要な言葉であったように思える。
しかし、修斗はわずかではあるが、言葉の選択や順番を間違えたようにも聞こえる。
クソキャラ感満載の雫の母、笠置衣子と外畠。弁護する亀岡の心境は。
衣子と外畠はそろってクズっぷりを発揮している。
九条に言わせれば彼らがクズであるかどうかというのも弁護側が決める問題ではないと思うが、亀岡は衣子と外畠の浅はかさや、至らなさを知っておきながらもAVメーカーを悪とし、ことを大きくして問題とした。
結果としては上にのべたように雫は居場所を失い、涙している。悪人であるはずの衣子や外畠はお金を手にして一時喜んでいるが、また機会があれば同じようなことをするだろう。
そして、皮肉にも外畠がほとんどもらうであろう慰謝料は彼が全話で悔しがっていたように高級ソープなどに使われるかもしれない。
という一連の流れについて亀岡は容認している。外畠のソープとかまでは知らないまでも、だいたいこういう類の人間がどういう目的でお金を欲しがっており、なぜ娘のAV出演にサインしたかは想像がついているはずだ。
もし亀岡が善悪のみで動くのならば、途中で諭しているように、もう少し衣子と外畠について過ちを犯さないような働きかけがあってもいいように思える。
亀岡がここまで性産業を目の敵にする理由というのは弱者を食い物にする構図、ということだけではないのかもしれないと思える。
弁護士亀岡と九条の価値観。弱者を商品化して消費することは許せない亀岡。
弁護士亀岡と九条はともにブレていない。
亀岡は性産業の、弱者を食い物にする構図は悪であり、許せないというスタンスで、九条は善悪や幸せは他人が定義するものではなく、ましてや弁護士が決めるものでもないというスタンスだ。
ブレていないと言ったが、個人的には亀岡は過去に割と空気の読めないオッサンを弁護した裁判を終えた際に「男勝りという言葉には根本に女性が男性に負けているという意識がある」と否定していた。
では女性であり障害者であるから弱者と決めつける亀岡のスタンスは自身の発言と矛盾しているのではないか、と私は感じる。
が、こういった矛盾に亀岡自身は全然気が付いていない、あるいは気づいていても無視しているようにも思える。
もう一つ、ここでサブタイトルである消費の産物、の「消費」について初めて語られた。
「弱者を商品化して消費する悪」というフレーズだ。
商品化される弱者とは、女性であり、 白石桃花であり、今回であれば雫を指すに違いない。消費する悪、というのはAVメーカーや消費者のことを指すのだろうか。話の流れとしては訴えの対象であるメーカーであるように思えたが、「消費」というキーワードからすると、消費者や提供者などの全般を含む、いわゆる需要面と供給面を指しているようにも思える。
第36審以降の展開は?
二つ描かれそうなこととして亀岡麗子がここまで性産業を目の敵にする理由と、もうひとつは殺害に至る雫の現在までのもう少しの描写である。
亀岡については強引な理論と凛とした態度の裏には結構大きなトラウマというか過去の体験があるのではないかと思っており、もしかしたらそういった部分も明らかになるのかもしれない。
雫について、新宿のバッティングセンターの前で風俗嬢になれるという電話を修斗から受けている。ここは確か、ウシジマくんではホスト瑠偉斗と愛華が出会った場所であり、今回初めて気づいたが多分修斗と雫が出会った場所でもある。
今回の修斗の一言は読者にとっても期待通りのショックを与えたものだと思うが、この表現が何らか対比的であるならば、雫の中では素敵な場所だったはずのバッティングセンター前が最悪の場所になる、という意味を持っているようにも思え、単純に風俗嬢という仕事がどうこう、ということではなく修斗の発言などに対しても悲しみや絶望を感じているのではないかと思える。
背中を向けた雫の表情は分からないが、深い悲しみに陥っているとするならば次回以降の挙動が心配である。
コメント