アメリカの保険業界での新規参入企業であるオスカーヘルスのIPO目論見書をまとめました。アメリカでは国民皆保険の制度が無く、2020年4月時点で把握している「2018年の現在無保険者」※1は2,750万人であり、当時の米国人口3.272億人の8.4%にあたります。
皆が入れるわけでない=保険や医療にかかわるコストやサービスのバランスが難しい市場の中で、健康保険業界のサービスを「インシュアテック」で高度化・低コスト化する注目の企業です。
バイデン大統領がオバマケアの方針の一つである「低所得層への医療保険の拡大」を進めるのであれば、関連のある銘柄でもあります。
※1参考:https://jp.wsj.com/articles/SB12026221249161783365604585542903222431016
本記事は情報の整理を目的としており、投資・その他の行動を勧誘する目的で作成したものではございません。投資の判断はご自身の意思と決定でお願いします。本記事の内容は主にIPO目論見書S-1をもとに作成していますが、翻訳における誤りや、具体的解釈の内容についての保証は致しかねます。
- オスカーヘルス IPO目論見書S-1 まとめ 2021年注目のIPO銘柄
- OSCR オスカーヘルスの株価 リアルタイムチャート
- 上場予定日はいつ?株価は? オスカーヘルスのIPO公募価格、上場初値は?(32~34ドル→36 ~38ドル→39ドルで値決め、上場初値36ドル) 上場市場:NYSE 上場日:2021年3月2日
- 日本の取り扱い証券会社は? SBI証券楽天証券・マネックス証券 2021年9月4日時点
- IPO目論見書まとめ
- 幹事企業:ゴールドマンサックスなど
- 経営者 CEO:マリオ・シュロッサー
- オスカーヘルスは健康保険の会社。
- 会員数は52,900人、個人向けの保険をアメリカの18の州に提供。
- 米国の医療業界の課題 高すぎる医療費とわかりづらい仕組み
- 何をしている?どんな会社?オスカーヘルスは健康保険の会社だが、保険だけではなく、健康リスクのケアが充実している
- 参考:遠隔医療=テラドックだが
- オスカーヘルスの損益計算書 売上推移は?
- リスク要因
オスカーヘルス IPO目論見書S-1 まとめ 2021年注目のIPO銘柄
IPO目論見書「S-1」の情報を中心にまとめています。
OSCR オスカーヘルスの株価 リアルタイムチャート
上場予定日はいつ?株価は? オスカーヘルスのIPO公募価格、上場初値は?(32~34ドル→36 ~38ドル→39ドルで値決め、上場初値36ドル) 上場市場:NYSE 上場日:2021年3月2日
売出し株数3,700万株
価格設定$32~$34→$36~$38→$39で値決め
2021年3月2日のIPOです。
10億ドル規模のIPOになります。
3月10日追記
上場初値は36ドル、終値は34.8ドルでした。
日本の取り扱い証券会社は? SBI証券楽天証券・マネックス証券 2021年9月4日時点
2021年9月4日更新
SBI証券(取り扱いあり)
楽天証券(取り扱いあり)マネックス証券(取り扱いあり)
DMM 株 (DMMドットコム証券)(不明)
上記の証券会社リンクから口座開設できます。
IPO目論見書まとめ
目論見書S-1では様々な情報が詰め込まれています。一部をまとめています。
幹事企業:ゴールドマンサックスなど
ゴールドマンサックス、モルガンスタンレー、アレン&カンパニー、ウェルスファーゴセキュリティズ、クレディスイスセキュリティズ、バンクオブアメリカセキュリティズなどです。
経営者 CEO:マリオ・シュロッサー
CEO:マリオ・シュロッサー
ハーバード大学のMBAコースを卒業
ドイツ出身
ブラジルのソーシャルゲーム会社Vostu(2010年代初頭にブラジルとラテンアメリカで最大のソーシャルゲーム開発会社だった)の共同創業者
オスカーヘルスは健康保険の会社。
2012年設立の健康保険の会社です。
フルスタック・テクノロジー・プラットフォームと、会員の皆様へのサービス提供に徹底的にこだわった、初の健康保険会社です。
フルスタックとは複数の技術を指します。複数のテクノロジーに基づいた保険のプラットフォームという理解で良いかと思います。
別の言葉では「インシュアテック企業」とも呼ばれており、インシュアランス(保険)+テック(テクノロジー)を合わせた言葉です。
フィンテックやフードテックといった言葉に示されるよう既存の業界とテクノロジーの融合を行っている流れの中で、「保険業界」でのテクノロジー企業であり新規参入の業種です。
会員数は52,900人、個人向けの保険をアメリカの18の州に提供。
2021年1月31日時点で529,000人の会員がいます。2017年1月31日現在の82,000人から増加し、年平均成長率(CAGR)は59%。
56-64歳の会員のボリュームが多いです。
個人向けの健康保険市場で会員にサービスを提供して7年目となる2020年までに、市場内の会員数に基づいて推定10%の市場シェアを達成しています。
PMPM、直接保険料率は515ドルでした。 2021年1月31日に終了した月は、2020年1月31日に終了した月の473ドルから9%増加しました。
12月31日に終了した年度 2019年と2020年には、出再された再保険料を考慮した後、獲得した保険料はそれぞれ4億6,890万ドルと4億5,500万ドルでした。
2019年および2020年12月31日に終了した事業年度の直接保険料は、それぞれ13億ドルおよび23億ドル。
2020年12月31日に終了した年度、84.7%の医療損失率(MLR)を通じてプラスのユニット経済を達成しました。
18州の291の郡にサービスを提供しています。
2020年に500万回を超える医療訪問がありました。
顧客は、幼児と忙しい親のために働く補償を求める家族、介護提供者を名で知っている慢性疾患の成人、および全体を通して彼らに役立つ給付パッケージを選択する高齢者が含まれます。
米国の医療業界の課題 高すぎる医療費とわかりづらい仕組み
医療費が高すぎることと、その原因としてサービスに無駄が生じているという課題があります。
米国の医療システムは世界最大で最も高価であり、2020年には4兆ドルを超えると推定されています。
医療費は米国のすべての自己破産のうち約66%を占めている状態です。
2019年にJournal of the American Medical Associationに発表された報告書によると、米国の医療費の25%近くが無駄になっており、これは、誤ったインセンティブ、調整の欠如、管理上の複雑さに悩まされたシステムの結果であるとされています。
Forrester Researchによると、健康保険のネット・プロモーター・スコア(NPS)の平均値は3で、健康保険会社の顧客満足度はどの業界の中でも最も低い部類に入ります。
オスカーヘルスのNPSはこの平均値を全年代で上回っています。
何をしている?どんな会社?オスカーヘルスは健康保険の会社だが、保険だけではなく、健康リスクのケアが充実している
フルスタック・テクノロジー・プラットフォームと、会員の皆様へのサービス提供に徹底的にこだわった、初の健康保険会社です。
単純に保険を提供するだけでなく、保険の加入者にとっての関心事である健康状態の維持・改善の手助けを行うサービスを提供しています。
具体的にはウェブサイトやアプリで医師の予約や、医師との無料通話、これまでの診察結果や処方箋の確認などが出来たりします。
また、ケアガイド3名+登録看護師1名からなるコンシェルジュチームが保険者1名に必ず付きます。彼らの存在が例えば適切な医師への結び付けやアドバイスなどにより、デイリーのケアをサポートする機能があります。
参考:遠隔医療=テラドックだが
遠隔医療の成長企業「テラドック」は1,093百万ドルの売り上げがあります。
・インターネットやスマートフォン等を通じで医療の提供を行ないますが、インフルエンザや結膜炎、感染症、メンタルヘルスなどを中心に診療を行う
・サブスクリプション
・1日20,000人の利用
・2020年総訪問数1060万件
・450の医療サブスペシャリティ
などの特徴があります。
遠隔医療サービスを単体で行うのがテラドックで、保険会社のサービス内に組み込まれているのがオスカーという理解です。また、対象とする病気の守備範囲が異なります。
医療保険大手のユナイテッド・ヘルスケアがテラドックを勧めることでさらに利用者を増やしている状況で、既存の保険会社もサービス強化を狙っているようです。
顧客目線でいうとテラドックのサブスクリプション費用+ユナイテッドヘルスの保険費用のようなものが、オスカーヘルスの費用(=売り上げ)に類似したものだと思いますが、現時点では、以下売上ボリュームに示すように一部の地域に限定しながらも大きな売り上げがあるように見て取れます。
オスカーヘルスの損益計算書 売上推移は?
2020年の売り上げは1,672百万ドルですが、出再保険前の保険料-出再保険料≒実質的な売上※となります。
※Premiums before ceded reinsurance-Reinsurance premiums ceded+Investment income and other revenue=Total Revenue
※保険会社は保険に対する保険に入るケースがあり、それを取り除いたものが実質的な売り上げをみなす という考え方です。
リスク要因
Risk factorの項目でリスクとなる要素が列挙されています。
気になった部分を拾っています。
ACA法、オバマケアの恩恵がある。変更または廃止によるリスク
アフォーダブルケア法(ACA)またはオバマケアの恩恵を受けています。
2019年と2020年、それぞれ約96%と95%の収益は、ACAの規制の対象となる健康保険の販売によるもので、主に個人と家族が直接購入した保険で構成され、次に小規模雇用者が購入した保険と福利厚生として従業員に提供されます。
その結果、ACAの一部または全体の変更または廃止、ならびに法的およびその他の憲法上の課題に対応する司法解釈は、オスカーの事業および財政状態、経営成績、またはキャッシュフローに重大かつ悪影響を与える可能性があります。
医療費を正確に見積盛る予測がるブレると生じる収益リスク。(健康保険会社としてのリスク)
オスカーの収益性は、医療費を正確に見積もり、効果的に管理する能力に大きく依存しています。
保険料は将来の費用の予測に基づいて保険年度に先立って設定されるため、当社の全体的な業績は医療費の変化に敏感です。たとえば、2020年の保険年度の医療費が1パーセントポイント高かった場合、リスク調整の決定と再保険を考慮した後、純損失は約1,360万ドル増加します。
ヘルスケアの規制と慣行の変化、ヘルスケアサービスの利用レベル、病院と医薬品のコスト、そしてより広範な競争環境、災害、気候変動の潜在的な影響、大流行、パンデミック、COVID-19)、米国の医療制度における継続的な不平等と人種差別、およびその結果としてのより広い社会における身体的および精神的健康コスト、新しい医療技術、新しい医薬品、プロバイダー詐欺の増加、および一般的な経済状況を含むその他の外部要因インフレや失業率などは、一般的に私たちの制御を超えており、健康上の利益を提供するコストを正確に見積もり、効果的に制御する能力を低下させる可能性があります。
特定地域での災害、疫病などによるリスク
収益が最も集中している州は、フロリダ、カリフォルニア、テキサスが含まれます。事業が地理的に集中しているため、地域的要因に起因する潜在的な損失のリスクが高まっています。
たとえば、当該地域での大地震、山火事、ハリケーンなどの自然災害、インフルエンザの病原性シーズン、流行またはパンデミック、ジカウイルス、ウエストナイルウイルスなどの新たに発生した蚊媒介性疾患、COVID-19、テロなどもリスクに含まれます。
参考:2020年JPモルガンヘルスケアカンファレンスでの目標は利用者40万人、売上20億ドル
新興の医療保険・技術開発会社のOscar Health(オスカー・ヘルス)は、2020年末までに同社のヘルスケアプラン利用者を40万人集め、売上20億ドル(約2200億円)を目指しているとJP Morgan Healthcareカンファレンスのプレゼンテーションで発表した
医療保険技術のOscar Healthは2020年中に加入者40万人・売上2200億円超を目指す | TechCrunch Japan
利用者は達成(40万→結果52.9万)していますが、売り上げは未達(20億ドル→16.7億ドル)です。※図の中で直接保険料が23億ドル、と書かれていたので、もしこの値を示すのであれば20億ドルを超えていますが、P/L上では16.7億ドルを売り上げと見なすものと捉えています。
個人的には新型コロナの影響などが大きいのかと思いますが詳細は分かりません。
2021年5月13日 Q1決算発表
以下のような結果になっています。
- 直接契約の保険料は、前年同期比43.5%増の8億2,080万ドル
- 収入保険料は、前年同期比332.5%増の368.5百万ドル
- 医療損害率は74.4%で、前年同期比670bpsの改善
- 保険会社の管理費率は19.8%で、前年同期比380ベーシスポイントの改善
- 保険会社のコンバインド・レシオは94.2%で、前年同期比1040bpsの改善
- 純損失は87.4百万ドル、前年同期比9.5百万ドルの改善、調整後EBITDAは26.3百万ドル、前年同期比59.9百万ドルの改善
重要KPI
参加社、直接契約の保険料、医療損害率
顧客内訳
ガイダンス
2021年8月12日 Q2決算発表
以下のような結果になっています。
- 2021年6月30日時点の会員数は563,114人、前年同期比34.9%増
- 2021年6月30日に終了した四半期の直接契約の保険料は、前年同期比44.4%増の8億3,810万ドル
- 収入保険料は、前年同期比364.3%増の5億2,820万ドル
- 医療損害率は82.4%で、前年同期比2170bpsの上昇
- 保険会社の管理費率は19.8%で、前年同期比330ベーシスポイントの改善
- 保険会社のコンバインド・レシオは102.2%となり、前年同期比1840bpsの改善
- 純損失は前年同期比32.1百万ドル増の△73.1百万ドル、調整後EBITDA損失は前年同期比21.6百万ドル増の△50.4百万ドル
MLR =医療損害率が前期より増えています。※ガイダンスよりは低い
直接契約の保険料、医療損害率
顧客内訳
ガイダンス
直接保険料は引き上げられ、MLRの割合は上がりました。
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